YOIYO
SABUROMARU
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TALK

スペシャルトーク

土屋守が語る
YOIYOとウイスキー

ウイスキー文化研究所
代表 土屋守氏
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ロッテ 中央研究所 チョコ・ビス研究部
チョコレート研究一課
研究員 荒井雄太氏

今回はウイスキー評論家として著書を多数手がけられ、「世界のウイスキーライター5人」にも選ばれた、ウイスキー界のレジェンド・土屋守氏をお招きして、YOIYO開発担当の研究員とともに、YOIYOと、YOIYO三郎丸のこだわりに迫っていきます。ジャパニーズウイスキーをとりまく現状、YOIYOに使われているクラフト酒の価値など、ウイスキーファン必見の内容です。

―ウイスキーとの出会い

土屋:もともと僕は記者をやっていたんですけどね。33歳ぐらいの時に将来を考えて、英語がこれからどうしても必要になってくるんじゃないかと思って、1987年にロンドンに行ったんですよ。その時に取材で行ったスコットランドで、当時は全然流行っていなかったシングルモルトを飲んで、面白さにのめり込んでいきましたね。

荒井:YOIYOにはコンセプトの企画段階から携わっており、YOIYOシリーズの品質の開発を担当しています。携わる前はハイボールを飲むくらいでしたけど、担当してからウイスキーの奥深さにハマり、今では家でもプライベートで飲んでいます。

―ジャパニーズウイスキーの魅力

土屋:日本のウイスキーの良さといえば、一つは日本の自然です。そして何より日本人のものづくりの精神。今回の三郎丸蒸留所の稲垣さんにしても、鋳物でポットスチルをつくったり、誰も考えたことのないアイデアを考えて、そのために色々実験をやった。他の国では考えられないことなんですよ。ウイスキーづくりに500年の歴史があるスコットランドでは変わらないことがいいことでもあるけれど、日本は100年前に始まって、蒸留所の数も少ないから、それぞれの蒸留所の中で色々つくり分けをやってきた。日本のウイスキーほどポテンシャルを持っていて、美味しいウイスキーをつくれるところはないかもしれない。

―全国に点在する
ディスティラリーたち

土屋:日本は、北は北海道から南は鹿児島、沖縄まで蒸留所がある。気候も全然違うから、全く別の面白いウイスキーがつくれる、それがジャパニーズウイスキーの面白さでもある。現時点で準備中のものも含めると、既に92の蒸留所があります。この調子で行くと、今年中に120を超えるかもしれないというぐらいに蒸留所が増えているので、YOIYOの可能性はまだまだありそうですね。

―YOIYO誕生秘話

荒井:コロナ禍になって、ロッテとしてもお家時間を楽しめるいつものお菓子よりもちょっと上質なものを提供できたら、喜んでいただけるんじゃないかなということで、ちょうど2年前にYOIYOは始まりました。ロッテだけで完結して終わりではなく、コラボ先の蒸留所とも一緒につくることで、その土地の魅力とか、その風景を届けられたらと今の形になりました。

土屋:つまりコロナがなかったら、もしかしたらYOIYOもなかったかもしれない?

荒井:そうですね。コロナ禍ということで、ネットで買い物をしたいというお客様のニーズが増えていたこともあり、そういったタイミングもきっかけとなって、ロッテとしてもECビジネスに力を入れていきたい背景がありました。YOIYOについては以前からご存知でしたか?

土屋:もちろん知っていました。ウイスキー初心者に、ウイスキーの世界を広める点で画期的なことだし、それぞれの日本の蒸留所が名前を出しながら、今回の三郎丸みたいにYOIYOのためのシングルカスクをつくったりと、われわれウイスキー人から見ても非常に面白いですね。ブレンダー自身もYOIYOにはこんなのがヨイヨと考える。(笑)
ウイスキーとチョコレートのコラボ、チョコレートによって蒸留所のことをプロモートする、お互いがwin-winになる関係をつくるんだったら、こういうやり方というのはすごくいいと思いました。

―希少価値のあるクラフト酒を
使うということ

土屋:ジャパニーズウイスキーの原酒は少なくて、世界中から人気で、普通にやろうとすると手に入らないですし、そことコラボできるのはロッテさんの力だし、目の付け所がすごくいいなと。
1箱600円って普通のチョコレートから見たら、決して安い値段じゃないですよね。しかし、中に入っている原酒は1本2〜3万円するようなものなので、正直この値段はちょっと安すぎる。(笑)
ただ、クラフトウイスキーの入門篇としてYOIYOを提供したいというロッテさんの思いがあって、原酒の値段がどんどん上がっていっている現状の中で、この価格を維持しているのは素晴らしいことだと思います。

―今回の三郎丸も、
もちろんレア物

土屋:今回のYOIYOに使われている三郎丸は2019年にZEMONで蒸留したものを熟成させた初めてのシングルカスクで、今のジャパニーズウイスキーの定義に当てはまる3年をクリアしていて、今回ロッテさんに特別に提供されたということですよね。ウイスキーファンが見たら、ちょっとそれはないよねってくらいすごいレアなものなんですよ(笑)。僕もニューポットの時は飲んでいるんですけど、それをバーボン樽に詰めて、3年熟成させたらどうなるかっていうのは今回初めてテイスティングしました。想像していた以上にいいですね。

―誰も考えたことのない
鋳造製蒸留器

土屋:三郎丸蒸留所は5年くらい前からずっと取材しているんですけどね、やっぱり驚いたのは2019年にZEMONを入れたこと。そんな発想があるのかっていうことで、誰も考えたことがない。それを稲垣さんが考えついたってのは、やっぱりあの土地がね、蒸留所の近くに高岡市があり、高岡が鋳物の街だからですよね。
ウイスキーのポットスチルは鍛造の銅でなければならないというのが、それまでの世界の常識だった。厚さ1センチぐらいの銅の板金を叩いて曲げて、全部手づくりして、継ぎ目のところは溶接をするしかない。金属加工で一番難しいのは銅の溶接、熟練の技があって、普通にやって30年くらいの修行をしないとああならない。それを鋳造技術でやったら1回型をつくってしまえば、コピーのようにつくることができるメリットがある。もちろん、日本伝統の高い技術が必要なことは言うまでもない。

―ZEMONの効果

土屋:鍛造だとポットスチルの内側はツルツルなんですよ。鋳物は細かい凹凸があるので、鍛造の板金より表面積が遥かに大きく、香気成分の中の不快なイオウ臭などを取り除く高い効果がある。それがZEMONで蒸留したウイスキーに現れていて、2019年6月に最初にニューポットを飲ませてもらったんだけど、こうも違うのかっていう驚きがあった。
新しいニューポットというのは、アルコールらしさが強いし、荒々しさがあるものなんだけど、ZEMONでやるとそれが取り除かれて、非常にソフトになる。
三郎丸は50ppmのヘビリーピーテッド麦芽を使っているから、本来もっと荒々しい、フェノリックなヨードっぽさが出るんだけど、それも柔らかくなっている。それがZEMONのすごいところ。

―ここで
「YOIYO三郎丸」を一口

土屋:口どけがすごくいいですね。こういう形でチョコレートの中にウイスキーが詰められて、昔のウイスキーボンボンみたいなものだと、結構砂糖の結晶が内側にできていたと思いますが、YOIYOに砂糖の結晶ができていないのはどうしてなんですか?

荒井:お椀のイメージでチョコレートシェルをつくって、その中にウイスキーシロップを流し込むのですが、普通のウイスキーボンボンは結晶化させて表面を固めてからまたチョコレートで覆うのに対して、YOIYOは結晶化させないで液状のままチョコレートで蓋をします。それがなぜできるかっていうと、この技術については企業秘密でロッテオリジナルの製法です。

土屋:それは結構難しいことなんですか?

荒井:難しいですね。手でつくる分にはいくらでも工夫してやることはできるのですが、工場で大量生産するとなると、大型機械でつくっていくので、ウイスキーと水飴を合わせた液体の微妙な粘度が重要になってきます。

土屋:粘度のこだわり、そしてアルコール度数のこだわりもあるということですか?なぜ4%にしたのかなっていうところがウイスキーファンとして聞きたいところだったんですが。

荒井:YOIYOのいい点は、最初にお酒を感じてもらって、口の中の温度でチョコレートが徐々に溶けて、最後はマリアージュしていくところです。そのような時にどのアルコール度数が最適かを研究しました。実はチョコレートと合わせると製品全体では4%くらいなんですけど、中に閉じ込めているウイスキーシロップのアルコール度数は12~3%くらいあるんです。

土屋:なるほど。

荒井:はい。
だいたい60%の原酒をまず頂くのですが、私の方で加水しながら、どのぐらいのアルコール度数がいいかなというのを決めて、実際に三郎丸さんにこのアルコール度数で出してくださいっていうのをオーダーしています。

土屋:そうなんですか。
提供される原酒によって、もうちょっと高い度数でやろうとか、テイスティングしてチョコレートと合わせた時をイメージされて度数を変えているということですか?

荒井:そうですね、他の蒸留所様でも、最終的なチョコレートと合わさった時のイメージを考えることがこだわりです。

土屋:我々ウイスキー飲みからすると重要な視点なんじゃないかと思うんですよね。そこまでのこだわりでやっているということ。なかなか面白いですね。

荒井:数字だけ見ると、4%って結構弱いイメージだと思うのですが、噛んだ瞬間にウイスキーシロップが出てくるので、瞬間的に12〜3%の結構力強い味わいになります。

土屋:そういうことなんですね。最初に噛んだときに、結構しっかりとピートを感じたのは。

―口どけのスピードにもこだわり

荒井:チョコレートが口の中で、時間とともに主張してくると思うんですけど、口どけのスピードをちょっとコントロールしている部分もあるんですよ。

土屋:カカオの比率を変えたり、硬さとかですか?

荒井:そうですね、カカオを使っている量もあるのですが、ココアバター、あとは油脂の種類を使い分けることによって口どけのスピードを変えています。

土屋:そのタイミングがどこかというところなんですかね、あまり早すぎても良くない、遅くても良くないとか。

荒井:そうですね。ブレンダーさんの考えもお聞きしながら、少しお酒の余韻が残ってるぐらいでチョコレートを溶かして、口に残っているタイミングでマリアージュさせていくとか、逆にチョコレートが出るタイミングを遅らせるとか、そういったところを調整しています。

土屋:なるほど、合わせる原酒によって毎回違うんですね。そこまでは知りませんでした。

―荒井研究員が考える、
チョコレートづくりの決め手

荒井:カカオの産地や加工工程による違いが大きいです。カカオ豆の品種はもちろん、産地で発酵工程を経るのですが、土地に根付いている酵母や酢酸菌の違いもあるし、発酵させる量でも違う。発酵で香りの前駆体をつくって、乾燥させ、ロッテに届いたら焙煎して香りを引き出していきます。ウイスキーの熟成に似ていますよね。

―土屋氏からみた、
ウイスキーづくりの決め手

土屋:今は樽を制する者がウイスキーを制すると思っています。原料にこだわるのはもちろんだけど、樽の容量とか材とか、ウェアハウスの環境だとか熟成が非常に大事です。ここ20年ぐらいで一番変わったのは樽への知見です。世界中が今一番欲しがっているのは、日本にしかないミズナラ樽なんですよ。これからどんどん、新しい日本のクラフト蒸留所が、ジャパニーズウイスキーと認められる3年をクリアしてくるので、YOIYOもこれからが非常に楽しみですね。

撮影協力:
ミズナラカスク MIZUNARA CASK

ミズナラカスク MIZUNARA CASK
〒106-0032 東京都港区六本木6-1-8六本木グリーンビル6F
Tel:03-5414-3222
営業時間 18:00~
https://mizunara-cask.com/